杉浦医院 |
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中耳炎 |
耳鼻科に受診する最もポピュラーな病気です。鼓膜の内側には通常空気で満たされる空間が存在し、そこを中耳(鼓室)といいます。そこが炎症になることを中耳炎といいます。子供さんの場合、先天的な形態異常が無い限り、鼻の悪さがこの中耳炎の原因となります。 中耳炎の病態を理解するには鼻と耳の構造をある程度知る必要があります。中耳は基本的には粘膜で囲まれた密閉空間ですが、一か所だけ開放されているところがあります。それが耳管です。耳管は粘膜に覆われた細い管ですが、中耳から鼻方向にのびて上咽頭に開口しています(耳管開口部)。この部位はふだん閉鎖傾向ですが、必要に応じて開く構造になっており、中耳の気圧を外の気圧と同じにするよう働いたり、中耳腔で産生される余分な水分(滲出液)を排出したりします。 また耳管内部の粘膜には非常に微細な繊毛が生えていて、その繊毛が運動会の大玉リレーのように粘膜上にのった水分やバイ菌などを中耳から上咽頭腔へはこんでくれます。つまり耳管は正常の状態ならば耳から鼻へ水やバイ菌を捨ててくれる役目を担い、開放したときには気圧のコントロールもしている、ということになります。 耳管の存在を身近に感じるエピソードがあります。みなさんはトンネルに入ったときや、エレベーターで急に高層階に上ったときに耳が“つーん”としたことはありませんか? そしてその時どうすればいいかを知っていますよね? そう、“つばをのむ”“大きく口を開けてあくびのまねをする”などの行為です。これこそが随意的に耳管を開く行為であり、耳と鼻がつながっていることを最も実感する瞬間なのです。 大変都合よくできているこの耳管の構造ですが、じつはこのシステムは簡単に破壊されてしまいます。原因は後に説明する鼻炎や副鼻腔炎といった慢性的な鼻咽腔の炎症です。これらの病気は粘膜の機能を著しく低下させ、まず耳管開口部の正常な動きを失わせます。そして耳管内の粘膜に進行して、耳から鼻という一方向性だった流れを壊してしまい、結果として中耳腔にバイ菌の侵入を許してしまうことになり中耳炎となるのです。 よくお母さん方が“水泳をして(もしくはお風呂でもぐって)耳から水が入ったので中耳炎になってしまったんでしょうか?”といった内容の質問をされます。これは誤りです。鼓膜で閉鎖されている限り耳にいくら水が入っても中耳炎になることはありません。でも外来で私が中耳炎のお子さんを診察したら“しばらく水泳はお休みしてね。お風呂でもぐったりもしてはだめだよ”と注意します。あれ?なぜでしょう?そう、“耳から入る水”が問題ではないのです。“鼻から入る水”が問題なのです。中耳炎になっているということはすでに鼻の中が炎症になっているという前提がありますので、雑菌を含んだ水が鼻から侵入し鼻の中の炎症を増悪させてしまうことを懸念しての注意なのです。 以上のように中耳炎の病態はある意味、なぜ“耳科”“鼻科”“咽喉科”にそれぞれ別れないで“耳鼻咽喉科”なのかを教えてくれるものです。おわかりいただけましたか? |